3月10日、アメリカのシリコンバレー・バンクが事実上の経営破綻状態になったとの報道がありました。2022年12月時点の総資産は2,090億ドルで、全米16位。リーマン・ショック時の2008年9月に総資産3,070億ドルで破綻したワシントン・ミューチュアル以来の大型破綻です。
米金融当局は3月12日、金融危機につながることを回避すべく、預金の全額保護を発表するなど、迅速に危機防止に動いたようです。
もともと、アメリカの預金保護の制度は、2008年当時に、1口座あたり上限10万ドル(1ドル=130円だと1,300万円)から、上限25万ドル(1ドル=130円だと3,250万円)まで引き上げられ、現在まで続いています。日本の預金保険制度の「元本1,000万円とその利息」に比べると保護される金額は3倍以上です。
しかし今回、その25万ドルの上限を超えて、預金の全額を保護するという特別措置が取られました。その理由は、シリコンバレー・バンクの預金のうちの9割が保護対象外の預金だったという事情もあったようです。
そもそも、今回の破綻劇は、報道によると、昨年から続くアメリカの利上げによる債券価格の下落で、保有資産の評価損が膨らみ、債券などの売却による損失を計上するのと同時に増資を発表したものの、TwitterなどのSNS上で経営不安説が拡散されたことで取り付け騒ぎに発展し、事実上の破綻状態に陥ったという流れのようです。
日本の銀行などの金融機関も、大量に国債を保有しています。アメリカほどではないにしても、日本の債券の利回りも上昇傾向にあります。ということは、債券価格は下落し、評価損を抱えている金融機関もあるのかもしれません。
実際に、シリコンバレー・バンクの破綻報道が出た直後、国内の銀行株も軒並み下落しました。いまのところは、日本の銀行の連鎖破綻にまでつながるような世界的な金融危機が始まったとは思えないので、一時的な株価調整かと感じています(希望的観測ではありますが)。
とはいえ、銀行などの金融機関の破綻は、それほど頻繁ではないものの、過去の歴史を見れば10~20年に一度くらいは起きています。あらためて、金融機関が破綻した場合のセーフティネットについて、基本的な仕組みを確認しておきましょう。
まず、日本の銀行などが破綻した場合、預金保険機構による預金者保護が行われます。預金保険による保護の対象となる金融機関は、国内に本店のある銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫などです。ただし、国内銀行の海外支店や、外国銀行の日本国内の支店は、保護の対象外です。
預金保険によって保護される金額は、決済用預金(無利息、すぐに引き出せる、決済サービス提供という3条件を満たした預金)は「全額」、それ以外の付保預金(普通預金、定期預金など)は「元本1,000万円とその利息まで」となります。
ちなみに、外貨預金などは預金保険の保護の対象外です。また、保護の対象となる銀行で取り扱っていたとしても、投資信託や保険商品は、預金保険の保護の対象外です。
それから、預金保険で保護される金額は、1金融機関につき、1人あたりの金額になります。同じ銀行の複数の支店に口座を持っている場合は、すべての口座を合算して「元本1,000万円とその利息まで」となります。この金額を超える預金があった場合は、その破綻銀行の資産状況によって、一部または全部がカットされる可能性があります。
なお、同じ破綻銀行に預金と借入れがあった場合、申し出ることによって、預金と借入れを相殺できる場合があります。
例えば、破綻銀行に1,500万円の預金と500万円の借入れがある場合、何も申し出ないと、預金は1,000万円までの保護、借入れは500万円のまま、となる可能性があります。
それが、預金と借入れの相殺を申し出ることで、預金の500万円と借入れの500万円を相殺し、預金1,000万円、借入れ0円にできる可能性があるのです。1,000万円を超える預金と、借入れがある場合は、覚えておくとよいでしょう。
このような預金保険制度の特徴からすると、銀行を利用するのであれば、複数の銀行で口座を作り、1口座あたり1,000万円を超えないようにしておくのが無難でしょう。そして、投資信託などの預金以外の商品を利用しておく。
投資信託であれば・・・
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